大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2212号 判決

依つて按ずるに、凡そ共謀に係る行為の責任は共犯者全部が之を負担すべきものであるから、仮りに害悪の通告者と、暴行者と金員の要求者とが各異なつて居たとしても、之等を一括して恐喝の所為を認定し得るときは判文上各人の行為の態様を区別して記載するを要せず、之等を一括して記載すれば足るものと解しなければならない。之を本件に就て看るに、原審第三回公判調書中、証人高山幹満の供述記載に依ると、同人に対し暴言を吐き且つ暴行を加へた者と、金員を要求した者(被告人)とは別人であることは之を認めることができるが、右の所為は全く別個の関係に於て行はれたのではなく「共謀」と謂ふ連鎖によつて恐喝罪を構成すべき一連の所為となるのであつて、而も其全部は共犯者の一人である被告人の責任に帰すべき事実であるから、原審が右暴行者と金員の要求者とを各別に判示しなかつたからと謂つて何等の違法がない。

(中略)

次に弁護人は原審判示第一の事実に就て、右は中止未遂犯であると主張するが、凡そ中止未遂とは犯罪の実行に着手した後純然たる自己の意思発動に因り該犯行を中絶する行為であるから之を本件に就て看るに、仮りに被害者が金員を提供したとしても被告人に於て之を受領しない程度の意思発動が無ければならないのである。然るに前記高山幹満の供述記載に依ると「私は田舎から来た者で金は一銭も持つて居ないからと云ひますとその人は(ぢつと)私を睨んだ上三人とも相談した様に何処かに行つて了はれました」とあるから此関係から看ると、被告人は被害者に金員の持合せが無いことを知つて犯行を断念した迄であつて而も其断念は金員の持合せが無いと謂ふ障礙に基因するものであるから素より純然たる障礙未遂罪に属する。故に此点の論旨も亦理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!